COLLABORATION 02
Isabelle Dupuy Chavanat #2
アルルは街中を歩くと古代ローマ時代が顔をのぞかせる、フランスの中にあってとてもイタリア的な街です。と同時に、中世のロマネスク教会、第二次世界大戦後の建築、そして今年の夏にオープンしたフランク・ゲーリー設計の最新の複合カルチャー施設の「リュマ・アルル」と、さまざまな時代の建築がコントラストを放つ、特殊な街と言えます。さまざまな時代が地層のようにレイヤーを成す一方で、ブラジル、日本、韓国など、いろいろなバックボーンを持つ人たちを引きつけるコスモポリタンな街でもあります。何よりもこうしたアルルに生きる人々が私を魅了します。
風土の面では、南仏特有の強い光り、そしてミストラルが吹き荒れ、美しいけれども厳しい気候が特徴です。内陸の方に目を向けるとごつごつした山肌のアルプス的風景が広がります。こうした意味でアルルの風土には男性的なワイルドさがあるかもしれません。伝統的衣装を誇らしく身に着けているアルルジェンヌを見ていると強いアイデンティティーを持っている土地柄だと思います。
物語を語りたいと思っています。職人というのは夢を生きている人たちです。その夢は現実になるものです。
インド、ネパール、日本、アフリカなどと、さまざまな地域の職人と出会いましたが、彼らは“手仕事”という同じ言語で語り合っているのです。手で語るので、言葉少なく、普段は寡黙ですが、話し出すと頬を高揚させて饒舌になるんですよ。私はカメラというメディアを通して普段、語らない人たちの代わりに代弁したいと思っています。8ミリの白黒フィルムで。
30年来、私が持っているジュエリーはマリー・エレーヌ・ドゥタイヤックのものだけです。私は人生においてあまり忠実な方ではなく、心変わりしやすいタイプなのですが、彼女のジュエリーにだけは忠実で、肌身離さず、海に入るときも着けています。ほかのジュエリーではダメなのです。もちろんラピスラズリ、アクアマリン、ペリドットなどの天然の石そのものがパワーを与えてくれるのですが、彼女のジュエリーは人を引き寄せるパワーもあるのです。
私が心を許す友人にインディア・マダヴィというインテリア・デザイナーがいます。実は彼女は私と同じ指輪を着けているのです。類は友を呼ぶと言いますが、マリー・エレーヌ・ドゥタイヤックのジュエリーを身に着ける人同士、どこかで出会うのかもしれません。彼女のジュエリーは持ち主をシンボリックに語る気がします。旅する女性、自立した女性、自由な女性、マリー・エレーヌ・ドゥタイヤックのジュエリーを身に着ける人はそんな女性が多いんですよ。
彼女は天然石の表情を引き出すように、できるだけシンプルなデザインをするのです。内包された地層のようなインクルージョンは一つとして同じものでなく、自然の儚さと同時に強い力を感じさせます。私の人生に常に寄り添ってくれているのが彼女のジュエリーなのです。
フランス、アルルを拠点にする写真家、映像作家。インド、ベトナム、韓国を旅し、クラフトの担い手たちを訪ね、その暮らしぶり、所作を撮影するフォトドキュメンタリー作家。エルメスの職人たち、作り手たちを追ったドキュメンタリーシリーズでは、ものを作ることに対して慈しむような職人たちの姿勢を丁寧に取材した。
写真・François Halard