COLLABORATION 03
Ruth van Beek #2
静止しているものに息を吹き込みたいと思っているんです。50年代、60年代の写真を集めていますが、写真は光を印画紙にプリントしたものなので何十年も絶つと化学的に表面が変化します。つまり、スチル画という静止しているものだけれど、表面は生き物のように変容しています。また、コラージュすることは写っている物をもとあった文脈から取り出すことにもなります。うさぎや白い磁器の壺が別々の雑誌や本に掲載されていたとします。もともとはまったく関連のないうさぎと磁器が、文脈から切り離されてコラージュされると見る人はそこに何かしらの関連性を見つけるかもしれません。
人形は大きなインスピレーション源です。微動だにしない人形に人は子どもの頃から引きつけられるって不思議です。人形の頬が色づき血の通った生き物に見えるからでしょうか?どちらにしてもそうした人形の存在に興味を持ってきました。
捉えどころのない難しい質問ですね。ごまかしのないもの、でしょうか。。。私が作品を作る上で意識しているのは構造を露わにするということです。飾り立て、ごまかすことなく、誠実にものごとを見せたいと思っています。もちろん私の作品は何が写っているのか謎というものが多いのですが、構造そのものは明快です。人を見るときにも化粧でキレイに整えた顔よりも、顔の骨格、毛細血管、筋といった嘘偽りのないその人の証に引かれます。それが私の感じる美かもしれません。
日本を訪れたのは一度だけですが、そこに自然にあったように見えるものにも人の創意工夫が感じられてはっとさせられました。地下鉄の構内でのことです。雨の漏水対策として天井から細いチューブが壁伝いに床に置かれたペットボトルに流れ落ちるように設計されていたのを見て、芸術の域に達している美意識を感じました。オランダでは誰も考え付きません(笑)。
オランダ北部の街、クーク・アン・デ・ザーンを拠点にするアーティスト。1950年代~70年代の雑誌や書籍の切り抜きをストックし、それらの思いがけないアレンジメントによって写真を再構築する。風変りなコラージュ作品は日本のこけしや生け花を題材にすることもあるという。
http://www.ruthvanbeek.com
https://www.instagram.com/ruth_van_beek/
写真・Koen Hauser