COLLABORATION 03
Ruth van Beek #2

顔を外に取り出す鏡の存在
アーティストの作品を通してD.W.M.の世界観を伝えるヴィジュアルコミュニケーション。3シリーズ目のアーティストコラボレーションでヴィジュアルアートを手がけたのはオランダのアーティスト、ルース・ファン・ビーク(Ruth van Beek)。古い写真を用いたコラージュ作品を制作するルースは常日頃から膨大な量の雑誌や専門書からの切り抜きを集め、ストックしている。そんな彼女が今回、D.W.M.のために制作したのはスキン(肌)をテーマにしたアートワーク。ルースが集めてきた様々な写真や本が並べられた空間そのものがコラージュ作品のようなアトリエで、好奇心旺盛な眼差しでインタビューに応えてくれた。
I am always looking for such details and features that
I can use to animate my collage figures.
表現する上でルースさんがコラージュという手法のどんなところに可能性を感じていますか?

静止しているものに息を吹き込みたいと思っているんです。50年代、60年代の写真を集めていますが、写真は光を印画紙にプリントしたものなので何十年も絶つと化学的に表面が変化します。つまり、スチル画という静止しているものだけれど、表面は生き物のように変容しています。また、コラージュすることは写っている物をもとあった文脈から取り出すことにもなります。うさぎや白い磁器の壺が別々の雑誌や本に掲載されていたとします。もともとはまったく関連のないうさぎと磁器が、文脈から切り離されてコラージュされると見る人はそこに何かしらの関連性を見つけるかもしれません。

コラージュに対する興味深い視点です。異なる物をそれぞれ素数まで分解してみると根源的なところでつながっているかもしれないということはD.W.M.の哲学にも通じるところがあると思います。そうしたコラージュ作品を作る上でのインスピレーションはどこから得ているのですか?

人形は大きなインスピレーション源です。微動だにしない人形に人は子どもの頃から引きつけられるって不思議です。人形の頬が色づき血の通った生き物に見えるからでしょうか?どちらにしてもそうした人形の存在に興味を持ってきました。

ルースさんにとって美の本質とはどのようなものですか?

捉えどころのない難しい質問ですね。ごまかしのないもの、でしょうか。。。私が作品を作る上で意識しているのは構造を露わにするということです。飾り立て、ごまかすことなく、誠実にものごとを見せたいと思っています。もちろん私の作品は何が写っているのか謎というものが多いのですが、構造そのものは明快です。人を見るときにも化粧でキレイに整えた顔よりも、顔の骨格、毛細血管、筋といった嘘偽りのないその人の証に引かれます。それが私の感じる美かもしれません。

日本に対してはどのような印象をお持ちですか?

日本を訪れたのは一度だけですが、そこに自然にあったように見えるものにも人の創意工夫が感じられてはっとさせられました。地下鉄の構内でのことです。雨の漏水対策として天井から細いチューブが壁伝いに床に置かれたペットボトルに流れ落ちるように設計されていたのを見て、芸術の域に達している美意識を感じました。オランダでは誰も考え付きません(笑)。

“mirrors / dolls” ©Ruth van Beek
Ruth van Beek

オランダ北部の街、クーク・アン・デ・ザーンを拠点にするアーティスト。1950年代~70年代の雑誌や書籍の切り抜きをストックし、それらの思いがけないアレンジメントによって写真を再構築する。風変りなコラージュ作品は日本のこけしや生け花を題材にすることもあるという。

聞き手、文・長谷川香苗
写真・Koen Hauser
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